書評を書いてみよう「エネルギー問題入門」その1

 そういえば、せっかく、はてなにブログもあるんだし、はてなブックマークもちょっとやっているんだから、書評を書いてみようと思いました。

 

 環境の変化もありまして、時間もたくさん取れるようになったので、やっていきたいです。しかも、最近では書評ブログとかも増えていますので、それもモチベーションになってきています。

 

 

エネルギー問題入門―カリフォルニア大学バークレー校特別講義

エネルギー問題入門―カリフォルニア大学バークレー校特別講義

 

 

 ではまず、第一弾、最近読んで面白く、何度か読み直している本「エネルギー問題入門」

 

 こちらの本はエネルギー問題を説いている本であります。昨今、日本では原子力の停止などによってエネルギーが多くのところで問題となっています。エネルギーは様々な利点、欠点があり、簡単には言えなくなっています。自然エネルギーは現状、政府の補助なしでは存続しえず、また化石エネルギーでは環境問題、そして原子力ではチェルノブイリ、そして日本でおける原発事故の危険性が示された。

 

 それら、すべてのエネルギー源についての利点や欠点、現状、将来を踏まえたわかりやすい本となっています。

 

 ここでは主に化石燃料について述べたいと思います。

アメリカで近年、最もホットな話題として、書かれているのはシェールガス、およびシェールオイルと述べられています。シェールガスとは地下深くにあるシェール層にある天然ガスであるが、最近まではあまり、採掘が盛んではありませんでした。その理由は採掘技術が未熟だったのであります。昔から、このシェール層には膨大な天然ガスがあったことがわかっていましたが、採掘コスト価格とが割が合わないために進んで行われることはありませんでした。しかし、石油高騰や、エネルギー枯渇問題などにより、採掘技術が進み、コスト以下の生産が可能になりました。コスト削減が可能になった重要な技術は水圧破砕法(フラッキング)と水平掘削です。

 水圧破砕法とはシェール層に掘削機を投入しそこに高圧の水を送り、層を割り、そこに含まれている天然ガス送った水とともに採取するという方法です。

 水平掘削とは地下深くにある薄いシェール層を水平に掘削する技術です。

絵で表すとこんな感じ。

f:id:PROOF:20140907014645p:plain

 このようにシェール層は薄く広がっているので、垂直で掘り進めるにはコストがかかるのであった。水平掘削のお陰で薄く広いシェール層をうまく採取することに成功しました。

  これらの技術によって天然ガスの価格は大幅に下がり、2014年9月現在、ヘンリーハブの100万BTU価格は4ドル前後に推移している。リーマン危機前と比べると約三分の一。リーマン危機での天然ガスの値段は9ドル前後であった。 これらの技術革新のお陰でアメリカは膨大な天然ガスを手に入れ、電力におけるエネルギーコストを大幅に減らすことができました。これに著者は思わぬ儲けものとよんでいる。

 さらにこの技術が発展して採掘可能になったのがシェールオイルである。ここ10年で石油の値段は大幅に上昇。 2004年くらいでは1バレル50ドル前後(これでも大幅に高くなった)であったものが、リーマン危機がすぎ、一旦低下したが、今では100ドル前後で価格は落ち着いている。これは価格の上昇は新興国の経済成長に伴う石油の需要増です。もともと、石油は膨大な埋蔵量があり、可採埋蔵量という指標が一般的に知られている指標であります。これは経済的に有効な埋蔵量であり、ゼロになったからといって、石油がなくなるわけではなく、経済性を無視すれば、埋蔵量はまだまだ存在するのです。昔からよく石油はあと50年で枯渇する説がありますが、これは昔の価格、1バレル20ドル前後の価格では採掘しても利益にならないので採掘しないのです。その価格でいけば50年で枯渇するはずでありましたが、しかし、石油の価格が上がれば上がるほど、可採埋蔵量は増えていく。そもそも、サウジアラビアでは1バレル3ドル以下で採掘できるコスト競争力を持っています。単純に考えると(もちろん輸送コストとかありますが)3ドルで掘って100ドルで売れる。バカ売れです。

 

 シェールオイルの掘削はシェールガスと同じく水平掘削技術を使い、そして、フラッキングではなく、電気を使い、オイルを高温で温め、サラサラにして採掘します。電気を使う方法は筆者も高く付くと思っていたんようですが、以外に安くでき、1バレル30ドルぐらいで採掘ができる可能性があります。

 アメリカのシェールオイル埋蔵量は妥当な線で1兆5000億バレルあるそうです。ちなみにサウジアラビアは埋蔵量は約3000億バレルであり、アメリカでの一日の使用量は約2000万バレル、世界での1日の使用量は約9000万バレルです。もし1バレル100ドルという価格であれば十分競争力があります。

 さらに石油は石炭や天然ガスから転用が可能であり、その技術はGTLやCTLという技術で呼ばれており、これらで作られた石油を合成燃料と呼ばれています。この技術は第二次大戦中のドイツも使用していた技術だそうですが当時では全く価格に優位性がなかったのですが今現在ではある程度の価格(1バレル60ドルで生産可能)で、生産可能ということです。

GTL - Wikipedia 

石炭液化 - Wikipedia

 これらの技術の利点として、石炭と天然ガスは熱量換算すると石油とは比べ物にならないほどの熱量を持っているので、埋蔵量に困らなくなるという点です。ある意味では価格は永遠に上がり続けることはなく、ある一点で価格は固定することができるようになります。

 このため、結局、エネルギー危機は液体燃料の危機であると言えます。液体燃料の使用用途は主に自動車です。石油を燃やしても、石炭みたいに燃えカスが残らないので(二酸化炭素などは出ますが)使用勝手がいいのです。液体燃料はさらに使用方法が豊富でもあり、プラスチックなどに転用できます。危機がおこるのはいつも石油というわけです。

 

 これらの技術によってエネルギー安全保障が大きくかわりました。アメリカは中東に依存しなくてもいいようになり、貿易赤字も縮小、さらには貿易黒字になる可能性があります。

 なんか長くなりましたが、簡単に言うとシェールガスすげえ、アメリカすげえということです。

もう少し書きたいのでもうちょっとだけ続くんじゃ。

 

 データ集と参考文献

天然ガス価格の推移 - 世界経済のネタ帳

原油価格の推移 - 世界経済のネタ帳

可採埋蔵量 - Wikipedia

外務省: 1日あたりの石油の消費量の多い国

世界の石油生産量が1日当たり9,281万バレルまで上昇=IEA - 世界経済のネタ帳

http://www.nicovideo.jp/watch/1397552685

 

 

 

エネルギー問題入門―カリフォルニア大学バークレー校特別講義

エネルギー問題入門―カリフォルニア大学バークレー校特別講義